遺言の解釈
遺言の解釈が問題となる場合
遺言に書かれた内容は、趣旨が明確でないことがあります。
手紙や電子メールでも、そこに書かれていることはどういう意味なのか、了解しにくいことはありませんでしょうか。
遺言も、言葉で表現しているものですから、そういう問題がおこりえます。
そこで、遺言の解釈が問題となります。
遺言の解釈―最高裁判所の指針
遺言の解釈について、最高裁判所は以下の指針を示しています。
(最高裁判所昭和58年3月18日判決)
「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」
遺言者の真意の探求が問題となるわけです。
遺言の解釈―事例紹介
遺言の解釈について、実際に裁判で問題となった事例を、いくつかご紹介します。
遺言の解釈事例1
「私が亡くなったら財産については私の世話をしてくれた長女の○○○○に全てまかせますよろしくお願いします」
- 地方裁判所の判断:遺産分割の手続を中心となって行うよう委ねる趣旨としました。(大阪地方裁判所堺支部平成25年3月22日判決)
- 高等裁判所の判断:遺産全部を包括遺贈する趣旨としました。(大阪高等裁判所平成25年9月5日判決)
遺言の解釈事例2
「遺言者は法的に定められたる相続人を以って相続を与へる。」
- 地方裁判所、高等裁判所の判断:法定相続人に相続させる趣旨としました。(神戸地方裁判所平成14年11月6日判決、大阪高等裁判所平成15年11月26日判決)
- 最高裁判所の判断:上記判断は是認することができないとし、「法的に定められたる相続人」は上告人を指し、「相続を与へる」は客観的には遺贈の趣旨と解する余地が十分にあるとして、破棄差し戻しをしました。(最高裁判所平成17年7月22日判決)
遺言書の解釈事例3
「遺言者は、左記金融機関に預託中の預貯金・信託・有価証券・その他遺言者名義の一切の預託財産を金銭に換価し第7条の費用を控除した残余額のうち、弐分の壱を○○○○に、四分の壱宛を△△△△および□□□□にそれぞれ相続させる。」
- 高等裁判所の判断:本件養老保険は、本件遺言の「預託財産」に該当すると解するのが遺言書の記載自体からみた真意の合理的解釈ということができるとしました。(東京高等裁判所平成17年6月22日判決)
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相続で遺言があった場合
このページの著者
弁護士 滝井聡
神奈川県弁護士会所属
(登録番号32182)